2008年07月07日

作品づくりの愉しみ(vol.54)

6月29日(日)、静岡市藁科生涯学習センター(旧藁科公民館)にて、作家の諸田玲子先生の講演会がありました。これは、第二次大戦中に藁科に疎開していた中勘助氏を記念した、「中勘介文学記念館記念事業」として行われたもので、演題は、「作品づくりの愉しみ」といったものでした。

この、作品づくりの愉しみというと、作家さんは書きたいものを書いて商売になるなら、それだけで十分よいではないかと思われがちですが、どうも出版社の意向で、書きたいものが書けないといったところが実情のようです。

例えば、諸田先生の場合、汚職事件が横行していたり、キレル子供がいるなどという点で、今の時代と似ている平安時代を書きたいという願望はあるけれど、出版社は、江戸時代の、しかも濡れ場をいれた作品を書かせたいということで、結局それを書かざるを得ないそうです。

また、連載を8本(1本につき、原稿が6~70枚)を書くとなれば、寝る間もなく、つらい稼業だそうです。

それでも、心血注いで出来上がった作品が立派な賞を受賞したとなれば、“作品づくりの愉しみ”ということになることでしょう。

諸田先生は『奸婦にあらず』(新田次郎賞)ほか、数々の歴史小説を書かれている方で、色々な作家の方との交流も多く、うちわけ話なども聞くことが出来ました。

たとえば、『あかね雲』を書かれた山本一力先生は、投稿したボツ作品がダンボール一杯になるほどあるそうですが、そこは売れればしめたもの――、その埋もれていた作品に、(――実力のついた我が手で――)手直しを加え、再び世に出すのだそうです。

そういったことでは、かつて自分の書いた作品の再生も“作品づくりの愉しみ”の一つになるような気がします。

作品がボツになっても諦めずに書き続ける――。
まさに、継続は力なりで、“続けることができる”という才能が、小説家には必要不可欠なのかもしれません。

あと、中勘助作品について触れますが――、
2003年の岩波文庫九十周年時に、読者アンケートをとったところ、1位:『こころ』(夏目漱石著)、2位:『坊ちゃん』(夏目漱石著)、3位:『吾輩は猫である』(夏目漱石著)、同3位:『銀の匙(さじ)』(中勘助著)であったそうで、知名度では夏目漱石には劣るものの、中勘助先生は、文学愛好者からは多くの指示を受けている作家さんであったということを知りました。

中勘助文学記念館「杓子庵」が静岡市葵区新間にあります。ここには、中先生の遺品や作品が展示してあるそうで、今度出かけてみようと思います。

* 今回は、主催者側の意向により写真撮影ができなかったので、画像の掲載はできませんでした。 
   m( _ _ )m  画像は、次回に乞うご期待・・・。
 




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Posted by 安倍七騎 at 00:16│Comments(0)催事
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